第67回日本神経学会学術大会に参加してきました。学会で聞いただけだとあまり定着しないことが過去の経験からわかっているので、勉強したことを少しまとめられればと思います。
全体の感想
今回の神経学会では全体的にCIDP/MGの免疫治療についての発表が目につきました。2025年1月にFcRn阻害薬がCIDPについて保険適応が通ったことや、日本神経学会の「慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024」の普及が要因かと思い、しっかりと勉強できました。一方で臨床神経生理の発表はやや少なく寂しく感じました。今回はCIDPについて気になった引用論文を読んで、CIDPの治療方法について少しまとめられればと思います。
日本におけるCIDPの全国調査(Aotsuka, 2024)
背景と方法
1つ目はAotsuka 2024です。Neurologyに掲載された日本におけるCIDPの全国調査の結果であり、1次調査でCIDPの有病率を推定し、2次調査では病型別割合、臨床症状、検査データ、治療内容、転帰を調査しています。2次調査では1,257例のEFNS/PNS 2010基準確定例について詳細な臨床データが解析されています。
結果
1次調査で推定された有病率は10万人あたり3.33人、罹患率は10万人あたり0.36人でした。これは前回の本邦調査(1.6/10万人)より高値ですが、診断基準の変更(AAN基準→EFNS/PNS 2010基準)の影響が大きく、欧米諸国(2.8–7.0/10万人)と概ね同様の結果でした。
病型分布はtypical CIDPが52%、distalが17%、multifocal/focalが17%、sensoryが6%、motorが4%程度でした。発症から初診までの期間中央値は全体で6か月でしたが、typical CIDPでは4か月と短く、multifocal/focalでは18か月と長いのが特徴的でした。Laboratoryデータとしては、multifocal/focalでは正中神経MCVが他病型より速い傾向にあり(41.7 vs typical 34.3 m/s)、髄液蛋白の上昇も他病型に比較すると乏しい結果でした。
治療方法としてはIVIgが選択されることが多く72%でした。その次はステロイドで15%です。14%は一次治療(IVIg・ステロイド・血漿交換)のいずれにも抵抗性でした。typical CIDPはIVIgへの反応性が高い傾向(88%)にあり、distal(76%)・multifocal/focal(77%)はやや低めでした。ステロイドもtypicalで治療反応性が高いですが(87%)、distal(74%)・multifocal/focal(73%)ではやや反応性が悪い結果でした。多変量回帰では、若年発症・筋萎縮なし・abnormal median–normal sural (AMNS) sensory patternがtypical CIDPの独歩予後良好因子として挙げられています。
OPTIC試験(Bus, 2026)
背景と方法
OPTIC試験は、IVIg単独とIVIg+IVMPの併用を比較した無作為化二重盲検プラセボ対照試験です。IVIgは改善するまでの期間が短いことが利点ですが、維持治療を必要とすることが多いです。一方でステロイドは治療が奏効するまでの期間は長いですが、より長期の寛解が得られる可能性が指摘されてきました。そこからIVIgとIVMPを併用すると良いのではないかという発想で始まったのがOPTIC試験です。
IVIg(loading 2 g/kg、その後1 g/kg)に、IVMP 1,000 mgまたはプラセボを3週ごと18週間(計7回)併用しています。主要評価項目は52週時点で寛解状態(18–52週まで治療なしでI-RODSまたはaINCAT-DS上の改善を維持)にある参加者の割合でした。
結果
IVIg+IVMP群で3名の肺血栓塞栓症と1名の深部静脈血栓症が起きたため、定症例数96例に達する前に組み入れが中止され、77例で解析が行われました。寛解率はIVIg+IVMP群で38%、IVIg+プラセボ群で28%でしたが、有意差は得られませんでした。事前想定(65% vs 35%)と乖離しており検出力不足の影響もあります。ただし、I-RODSやaINCAT-DSにおけるベースラインからの改善幅はIVIg+IVMP群の方が大きく(I-RODS中央値 +13 vs +4)、改善する症例ではより大きな効果が得られる可能性が示唆されました。
まとめ
CIDPは希少疾患ですが、適切に治療すれば症状の改善が得られる疾患です。ただ、heteroな疾患であり背景に複数の病態が想定されること、病勢を反映するバイオマーカーがないことなどは、治療選択や治験において問題です。また、ステロイド・IVIgなどの既存の治療方法をいかに選択するか、新薬であるFcRn阻害薬をどのタイミングで使うかなど今後の課題も多い状態です。
現時点での治療選択における情報としては以下のようにまとめられます。
💡 治療選択のポイント
- IVIgが使用されることが多いが、ステロイドでも長期の維持・寛解を得やすい可能性がある。
- IVIg+IVMPの併用では血栓症が起こりやすい。
- IVIg+IVMPで反応性が得られた場合、IVIg単独よりもベースラインからのよりよい改善が得られる可能性がある。
- multifocal/distalなどのCIDP variantsは、治療反応性がtypicalより低い傾向がある。
いまだに誤診が多い疾患であり、pitfallに注意しつつ診療していければと思います。
引用文献
- Bus SRM, van Doorn IN, Zambreanu L, Wieske L, Bogaards JA, Abbas A, et al. Intravenous methylprednisolone as add-on induction therapy for chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy: a randomised controlled trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2026;97:558-566.
- Aotsuka Y, Misawa S, Suichi T, Shibuya K, Nakamura K, Kano H, et al. Prevalence, clinical profiles, and prognosis of CIDP in Japanese nationwide survey: Analyses of 1,257 diagnosis-confirmed patients. Neurology. 2024;102(6):e209130.

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