CMT1Xの症例を経験したので、今回CMT1Xについてまとめます。
CMT1X(CMTX1)は、GJB1遺伝子の病的バリアントによって生じるX連鎖性のCharcot-Marie-Tooth病(CMT)です。男性と女性で臨床像が異なり、特に女性では症状が軽い、左右差がある、神経伝導所見が不均一といった特徴から、診断が難しいことがあります。
本稿では、CMT1Xの遺伝形式、臨床症状、男女差、電気生理学的特徴、遺伝学的検査を整理します。
1. CMT1Xとは
CMTは、遺伝性の運動感覚性ニューロパチーの総称です。CMT1XはGJB1遺伝子の病的バリアントによって生じ、CMT1Aに次ぐ主要なCMT病型の1つとされています。
GJB1遺伝子は、gap junction protein beta 1、すなわちconnexin 32をコードします。Connexin 32は末梢神経のSchwann細胞などで発現し、その機能異常によって運動・感覚神経障害が生じます。
本邦でCMTが疑われた1,483家系を解析した研究では、GJB1バリアントは5.9%に同定されました。この数値は一般人口における有病率ではなく、遺伝学的検査へ紹介されたCMT疑い例のなかでの頻度です。
2. 遺伝形式
CMT1XはX連鎖性遺伝形式をとります。男性はX染色体を1本持つため、GJB1の病的バリアントがあると症状が現れやすく、一般に女性より重症です。女性はX染色体を2本持ち、X染色体不活化の影響も受けるため、無症状から男性と同程度の障害まで表現型に幅があります。
家系図では、父から息子への伝達がないこと、病的バリアントを持つ父の娘は全員がそのバリアントを受け継ぐことがX連鎖性遺伝の手がかりになります。ただし、小家系、女性の軽症例、家族の診断状況などによって典型的な家系図にならないこともあります。遺伝形式の説明や家族への検査は、遺伝カウンセリングとともに進めます。
3. 臨床症状
CMT1Xでは、長さ依存性の運動感覚性ニューロパチーを呈します。下肢遠位から症状が目立ち、進行すると上肢遠位にも障害が及びます。
- 足関節背屈などの下肢遠位筋力低下
- 下腿遠位・足部の筋萎縮
- 凹足(pes cavus)、hammer toes
- 腱反射低下・消失
- 足部から目立つ感覚低下
- つまずきやすさ、走りにくさ、靴の合いにくさ
- 進行例における手内筋の筋力低下・巧緻運動障害
発症時期を尋ねるときは、「しびれや脱力を病気として自覚した時期」だけでは不十分です。子どもの頃のつまずき、体育の苦手さ、足関節捻挫、若い頃からの足形や靴の問題などを具体的に確認します。スリッパが脱げやすいなども重要な情報です。
また、CMTは陰性症状だけの疾患ではありません。しびれ感や疼痛などの陽性症状があっても、CMTを除外する根拠にはなりません。
中枢神経症状を伴うことがある
GJB1は中枢神経系のoligodendrocyteにも発現します。CMT1Xではまれに、一過性の構音障害、片麻痺、失調など、脳卒中様の中枢神経症状を呈することがあります。112例をまとめた過去の研究では、15例に中枢神経症状があり、そのうち6例で脳卒中様症状が報告されました。
4. CMT1Xの男女差
CMT1Xを診断するうえで最も重要な特徴の1つが男女差です。一般に男性は若年で発症し、運動障害が強くなります。一方、女性は発症が遅く、軽症であることが多いものの、表現型のばらつきが大きいことが特徴です。
本邦の研究では、平均発症年齢は男性21.6歳、女性35.5歳で、男性の方が若年発症でした。男性では下肢運動機能などの障害もより強く認められました。
フランスのCMT1X 263例(女性137例、男性126例)を解析した研究では、女性は男性よりも筋力低下の左右差と、神経ごとの運動神経伝導速度のばらつきが目立ちました。48歳を超えた女性には、男性と同程度まで進行する群と、軽症または無症状にとどまる群があり、女性を一律に「軽症」と考えることはできません。
Diagnostic pearl
女性CMT1Xでは、左右差や神経ごとの不均一性があっても遺伝性ニューロパチーを否定できません。「遺伝性なら左右対称で、神経伝導速度も均一」と決めつけないことが重要です。
5. 神経伝導検査の特徴
CMT1Xの神経伝導所見は、典型的な脱髄型と軸索型の中間に位置することがあります。男性では運動神経伝導速度が中間型を示すことが多く、女性では正常に近い伝導速度から中間型まで幅があります。
特に女性では、神経ごと・左右で伝導速度が異なり、後天性の脱髄性ニューロパチーのように見える場合があります。前述のフランスの研究では女性の39%に運動神経の伝導ブロックが記録され、4例はCMT1Xの診断前にIVIgを投与されていました。
したがって、神経伝導検査だけで遺伝性・獲得性を二分するのではなく、発症年齢、長期経過、家族歴、足変形、障害分布を統合して解釈します。
6. 診断
CMT1Xの診断は、臨床像と電気生理学的所見から遺伝性ニューロパチーを疑い、GJB1の病的バリアントを遺伝学的検査で確認して行います。
診断の手順
- 小児期からの徴候を含めて発症時期・経過を再構成する
- 数世代の家族歴を、診断名ではなく症状・足形・歩行状態について留意しながら聴取する
- 凹足、hammer toes、遠位筋萎縮、腱反射、感覚障害を診察する
- 神経伝導検査で運動感覚性ニューロパチーの分布と病型を確認する
- 遺伝カウンセリングを行い、GJB1を含む遺伝学的検査を検討する
CMTの遺伝学的検査では、PMP22の重複・欠失が最初に調べられることがあります。しかし、PMP22の重複・欠失がないことはCMTを否定しません。臨床的にCMTが疑われる場合は、GJB1を含む遺伝子パネル検査など、次の検査を検討します。
7. 診断後の対応
現時点でCMT1Xに対する確立した疾患修飾療法はなく、症状と機能に応じた支援が中心です。
- リハビリテーションと過用・廃用の回避
- 足関節装具、靴の調整、必要に応じた整形外科的評価
- 疼痛や感覚症状への対症療法
- 定期的な筋力・歩行機能・手指機能の評価
- 遺伝カウンセリングと家族への情報提供
遺伝学的診断は病名を確定するだけでなく、不要な免疫治療を避け、本人と家族が適切な遺伝学的支援を受けるためにも重要です。
8. Take-home
- CMT1XはGJB1遺伝子の病的バリアントで生じるX連鎖性CMTです。
- 男性は若年発症・重症になりやすく、女性は発症年齢と重症度のばらつきが大きいことが特徴です。
- 女性では筋力低下の左右差や不均一な神経伝導所見を認め、獲得性脱髄性ニューロパチーと紛らわしいことがあります。
- 診断名だけでなく、子どもの頃からの運動歴、家族の足形・歩行状態を聴取します。
- PMP22検査が陰性でもCMTは否定できません。臨床的に疑わしければGJB1を含む追加検査を検討します。
- 診断後は機能維持の支援と遺伝カウンセリングを行います。
参考文献
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本稿は医療者への情報提供を目的としており、個別の患者に対する診断・治療を指示するものではありません。実際の診療では最新の診療ガイドラインと患者ごとの臨床状況をご確認ください。

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